このレビューはネタバレを含みます
話題作をテレビ版にて。弱い自分に打ちのめされても歯を食いしばって前を向き乗り越えろという人生訓は、どうしても辛いときには逃げても良いとする昨今の世間的風潮とは相容れないある意味で古い価値観であるけれど、子供の情操教育の面ではこちらがより逞しく育つだろうと想像する。難しい漢字や言葉にごく自然に触れ興味を持つよう促される点も良い。こんなどうでもいいことを書いたのは、それくらいしか良いところが私には見つからなかったから。子供向けのアニメではあるし物語の特異な性質上ある程度は仕方ないのかも知れないけれど、設定なり状況なり内省なり何もかにも事細かに台詞やナレーションで説明してしまっているのが個人的には五月蝿くてしょうがない。例えば鬼が自身の術の素晴らしさを独り語りでさも得意げにくどくど説明しているなんて図はどう考えても異様だろう。この物語には考えながら見る余地が一切ない。終始そんな感じであり大人の鑑賞に耐え得るものではないだろう。また主人公らがこんなにもオイオイ泣きじゃくるのは、これまでの強いばかりのヒーロー像からするとより人間的であるから却って新鮮に映る面もあったけれど、それが観客を泣かせる為の安直かつ阿漕なやり口のように思えて気持ちが悪さも感じてしまう。