「イングロリアス・バスターズ」「ジュリアン」でフランス屈指の人気俳優となったドゥニ・メノーシェ主演。そして変態的な美意識の持ち主、フランソワ・オゾン監督。
この組み合わせに惹かれて鑑賞。
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」(1972)のリメイクだそう。オリジナルは全く存じ上げず。
映画監督ピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノーシェ)が暮らす、事務所も兼ねたアパルトマンに親友で大女優のシドニー(イザベル・アジャーニ)が青年アミール(ハリル・ガルビア)を連れて訪れる。アミールの美しさ一目で恋に落ちたピーターは、彼を自宅に住まわせ、映画の世界で活躍できるように手助けするが—— 。
麗しき青年に恋するおじさん。
それはもう狂おしい程に。
いや寧ろ、ここまで恋に狂えるのか!?
ドゥニ・べノーシェは太っちょさんなので、アミールを恍惚とした表情で見つめる姿も、嫉妬に怒り狂う姿も、どこか可愛い。マブリーがラブリーなのと同じ原理だな、これは。
ほぼワンシチュエーションで展開する中で、人の感情の揺らぎを鮮明に映し出している。鏡を使った演出もお見事で、そこは流石のフランソワ・オゾン。
イザベル・アジャーニは名前は知っていたけど、出演作を観るのは初めて。昔は美しかったんだろうなぁ〜。
とにかくおじさんが悶え苦しむ姿を見せられるが、85分と言う短尺で飽きさせず、そして何よりラストにある人物がピーターにしっぺ返しを喰らわせる展開が痛快過ぎて声が出た。
同性愛を描きながらも、意外とフランソワ・オゾンの変態風味は薄い気がする。