【それでも世界は続いていく】
※ベルリン映画祭金熊賞
胸がギュッとなる作品だった。
同じ日から公開の「キノ・ライカ」がフィクション要素を取り入れたドキュメンタリーだとしたら、この「太陽と桃の歌」は差し詰めドキュメンタリー的フィクションという感じだろうか。
4世代。
労働集約型で、かなりのノウハウが要求される桃農家。
米や小麦と異なり、果樹は毎年刈り取るわけじゃないことを考えると、大切に管理してきた果樹が、根こそぎ薙ぎ倒されるのを見るのは憤りしかないだろうって、お父さんの気持ちは理解出来る気がする。
しかし、当然、楽に稼げるならそれが良いと思う家族がいてもおかしくはないし、何をしたら良いのか目標が定まらないのもいる。
取り巻く環境の変化に対して全く異なる気持ちや意見を持つところは、メディアが”分断”なんて言って大袈裟に取り上げなくても、昔からあることだよなと考えたりした。
映画は淡々と”その日”に向かって進む。
ただ実は、風景が一変することや、生活が大きく変化することに対するモヤモヤしたものも含めて、気持ちは意見が異なるもの同士でもきっと同じだ。
太陽光パネルは日本でも問題になってるところはあるし、なんだかなあって気持ちにもなった。
最近も、仕事の関係先で、太陽光パネルの銅線が盗難にあって、保険が降りるとか、金額はどうだとか、新しいのは銅ととアルミの合金らしいとか聞かされたばかりで、スペインにはそんな盗難をするような輩はいないのかしらなんて余計なことまで考えながら観ていた。
エンディング、響くのは重機の音と、孫たち子供のはしゃぐ声。
相入れない音は現代社会にはつきものだ。
それでも世界は続いていくのだ。
胸がギュッとなった。