宵山でごった返すスカイビルもこちらテアトル梅田は静かですぞ。
テケツで思わず『太陽とももの花』と言ってしまうも、お兄さんは素知らぬ顔で応対してくれた。
ワセリンでベタベタのあのピンク色のハンドクリーム、53年の発売だそうで私と同年輩だわ。
わが子に対するうちの母親の「三種の神器」はポポンS、ビオフェルミン、そしてももの花だっのよねえ、死ぬまで忘れないわ、きっと。
と、ここまでは映画を見る前に打ち込みました。
ところで『悲しみに、こんにちは』の監督カルラ・シモンさんの新作『太陽と桃の歌』、見てみると…!
年の瀬に、とうとうやってきた、今年の外国映画ベストワン
(因みに昨日までのお気に入り①パストライブス②至福のレストラン③システムクラッシャー)
カタルーニャの桃農家の話。
監督の家族は実際にカタルーニャの田舎で桃農家を営んでるそうで、役者さんたちも現地オーディションの素人さんが大半みたい→これが凄いの!
ト書きみたいなサポートもほぼ無し、話の流れは結構強引(ことばがわからないので尚更)
でも実はウサギにしてもユンボにしても(見ないと何のことかさっぱりわからないでしょうが)、なんとなれば私の嫌いなクローズアップ・バストショットの多用にしても、全部に意図があって、良い意味でとても知的な構成。(貯水池からの水振分エピソードだけちょっと説明過多ですけど)
音と絵の使い分け、混交のテクニックにも痺れます。
ひょっとすると、映画の導入ではもどかしさを感じる方も少なくないかも。背景説明とか一切無いんで「なんやねん、これは?」みたいな。
でもバルタザール(!)っていう兄ちゃんに通訳を頼んで外国人出稼ぎ(トルコ? ギリシャ?)の人の人減らししたりするあたりからは、ググッと前のめりになること請け合いです。
吸飲みみたいなワインの酒器(ポロンとかいうらしい)での実に旨そうなワインの飲み方や、田舎の祭りでの演芸大会、マリファナのエピソード、そして何より富有柿みたいに扁平で、ぱっと見杏っぽくもある彼の地の桃の甘そうなこと!
で、その素人さんたちのを活かし切ったドラマ作りが、そのまんまほぼドキュメンタリー。
『三里塚辺田部落』『阿賀に生きる』あるいは『不知火海』や野田真吉の『新日本地理映画体系』にも繋がるし、民映研の姫田忠義ともオーバーラップする部分がたくさん。惚れます、ほんとに。