このレビューはネタバレを含みます
コレはネタバレ注意にせざるを得まい……。じゃなきゃ感想が、イケイケ男子に注意せよしかなくなってしまうので。
米国で2年連続ベストセラーのミステリー小説が原作とのことで興味を持って調べてみたら、日本でも2021年の本屋大賞受賞しててテイラースウィフトが自ら楽曲を提供とは……また見る前から勝手にハードルが上がってしまった……。
とりあえず上のことだけ頭に入れて劇場へ。予告編が終わっていざ本編が始まってみたら、美しい大自然と女性のモノローグでスタート。
「どこやろ?」って思ってたらどうやらノースカロライナらしい。へぇーノースカロライナって綺麗なところなんすね〜☺️
でもこんな綺麗なところで人が死んでる。コレが今回物語を引っ張る事件で、主人公の女性が容疑者とのこと。
投獄された彼女の元へ引退した弁護士老人が現れる。
なるほどこの2人でバディを組んでの湿地帯を舞台とした探偵捜査もの……と思いきや全然違いました!またか!
(『ザ・メニュー』と同じ日に見ました)。
けどこっちは予想が外れたことは普通に自分が悪かったのですが、そんな事すら見ている間に忘れてしまう中々丁寧で美麗なヒューマンドラマ。
なんか画面の中にずっと緑があった気がする。
湿地帯に1人取り残され逞しく生きてきた女性の人生に訪れた不幸を描き、観客に真の罪を問い幸福感を与える王道クライムヒューマンドラマでした。
……で、終わらないんかーい!☝️💦
最後の最後、主人公が天に召されて幸せを極めてから見つかる"殺人の証拠"。
この結末の後だと彼女が語っていたホタルの捕食の話とか「沼地は何でも隠してくれる」みたいな自然トークが全部怖く感じる。「善とか悪じゃない」っていうのがまたね……。
彼女をするりと信じ込めてしまった映画の作り自体にも恐ろしさがありますね……。
エンドロールの間のあのなんとも言えない気分よ。見返さないけど見てよかった〜って感じでした。なので3.9。
帰りの電車に乗りながら、この映画の内包する女性の強さを肯定するメッセージに関心……したところでこの日3回めの「ん?」。
多分コレは考えすぎの可能性もあるんだけど、ふと思い出してして考えてしまったのは、心優しき老弁護士の名演説。
彼は心を尽くして彼女の犯罪が如何に不可能だったかを説明していた……。あの"犯罪の証拠"は、その演説を全て覆す決め手にはならないのではないか。
確かに"証拠"が見つかったとして、彼女が犯人だった、で済ませることはできるし、それを否定しきる材料は映画には無い。
でも同時に彼女を犯人ではないとする事を否定しきる材料も映画にはないように思えるのだ。
"犯罪の証拠"が彼を殺して奪ったものという証拠は?拾ったのかもしれないし、それがいつなのかもわからない。(まぁ明らかに隠してたけど)。
ただ自分がふと感じたのは、"犯罪の証拠"が"隠されていた"という事実を見て、彼女が犯人だと決めつけた自分がいたことだった。
それは、法廷で彼女が沼地に住む理解できない余所者だから犯人なのだと決めつけようとしていた町人たちと同じなんじゃないか?
それを否定する材料をこの映画はくれていたんじゃないか?
人を信じるチャンスをくれていたんじゃないか……?と。
映画の結末としてはどっちでもいいと思いますし、自分が面白いと感じた方を取るのが正解だと思います。
だからこそ自分は、この真実の間で揺れた瞬間が楽しかったのと、その揺れの大元となる女性の人生を丁寧に描いた作品に敬意を評したいと思えました。