ニカイドウ

ロストケアのニカイドウのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
5.0
百花ちゃんの「うんち食べてる!」が1番辛いって…
訪問介護先で、介護センターの所長と老人の死体が発見される。現場にはニコチン入りの注射器が落ちていた。
調べると、過去にも心不全と診断されていた不審死が、同じ介護センターの利用者の中に40件以上も発見される…
半分より前に犯人がわかってしまい、この後どうなるんや?って思ったけど、松山ケンイチ演じる斯波宗典と長澤まさみ演じる大友秀美との対峙。主張と主張のぶつかり合い。
正論と暴論。やけど、それは条件によって裏返る。
人は、見たくないものを消してしまえる。
正しさは見えるものからしか判断出来ない。
健康やお金によって左右される老後。
考えたくないけど、誰にでも老いはやって来る。
俺だって負の遺産を子供には託したくないんよ。
榎本明の「人として死にたい…」のシーンは観ているのも辛かった…
それやのに、髭生えてる松山ケンイチがどうしてもイエスに見えてしまう…
宗典は正しい。大友さんも正しい。おじいちゃんが死んで安心する遺族も、宗典に全て押し付けて怒鳴り散らす遺族も正しい。
でも、みんな間違ってる。
宗典は見つかる事を望んでた。
見つからなかったから殺し続けて、見つからなかったから正当化が解けなくて、人殺しと罵られて胸を痛める。
大友さんは、そんな宗典を見つけた。
それは彼には救いやったと俺は思う。
繋がりを断ち切る必要を感じつつ、繋がっていたい矛盾。理解されなくて良いと思いつつ、理解されたい矛盾。矛盾だらけで嫌になるなぁ、人間って。それでも逃れられへんからね。
生きるしかないねん。
矛盾する心を持ちながら…
今作は、自分の大部分をゴッソリ抉ってくる作品でした。
そして、たまに俺の中で連続して観た映画が噛み合ってしまって新しい解釈が生まれる現象ってのが起きる時がある。
『赦し』と『ロストケア』が正にそうやった。
清濁併せ持つ人間の性が垣間見える2作品でした。
ただね…イエスがね…
おかげで精神が落ち過ぎる事なく最後まで観る事が出来たんやけどね。イエス無かったらしばらく沈むよ、マジで。笑
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