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花様年華 4Kレストア版のToShのレビュー・感想・評価

花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)
4.0
既婚者同士の密やかな恋をセンシュアルな映像で綴った大人のラヴ・ロマンス


物語
1962年、香港。地元新聞社の編集者チャウ(トニー・レオン)と、日系企業で秘書として働くチャン夫人(マギー・チャン)は、偶然にも同じアパートに同じ日に引っ越してきた。隣人同士の付き合いを始めたものの、チャウの妻とチャン氏は仕事が忙しくあまり家におらず、二人はそれぞれに孤独を感じていた。だが、互いの伴侶が実は不倫関係にあることを知ってしまう。裏切られ傷ついた者同士が慰め合うように、二人は時間を共にし始める。


原題は“人生でもっとも美しい瞬間”という意味。

スーツでバシッと決めたトニー・レオンとタイトなチャイナドレスに身を包んだマギー・チャンの魅力はもちろん、60年代香港のムードを鮮やかに再現したクリストファー・ドイルの撮影、美術と衣装が素晴らしい。

劇中の物語が終わりを迎える1966年は、中国本土で文化大革命が始まった年。ラストに表示される「過去は見えるだけで触れることはできず、見える物は全て幻のようにぼんやりと……」という字幕からも、本作が時代の変化を意識していることが窺える。

2人の心が互いを求めたこと、分けあった食事の匂いや雨の匂い、一瞬の眼差し、言わなかったこと。美しい記憶があるからこそ、前に進んでいける。2度と戻れなくても……


【午前十時の映画祭14 × Filmarks】コラボレーション第2弾にて鑑賞
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