アフリカからベルギーへ移り住んだ難民で、偽りの姉弟のトリとロキタ。ビザが無くて正規の仕事に就けないロキタは、ドラッグの運び屋で日々やり過ごしていた。そんな中偽造ビザを入手しようと更に危険な橋を渡ってしまう物語。
ベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟の現時点での最新作。社会派の作品を多く手掛ける彼らですが、本作でもベルギーに流れ着いた難民。それもまだ10代の少女と少年の劣悪で過酷な運命を描いています。
彼らの過去作にも通じる演技経験の無いキャスティング、BGMの劇伴も無し。手持ちカメラでドキュメンタリータッチの作風はしっかりと貫かれていました。だからこそリアリティが感じられます。
普通のドラマ映画なら徐々に事態は好転していきますが、やはりダルデンヌ兄弟の作品らしくそんな雰囲気は無し。むしろラストではかなり悲痛な現実を突きつけてきます。
こういうのも現実。何も救いの手が無ければこうなってしまうものだというのを克明に示しているように思えました。
日本ではなかなか考えられない移民や難民の問題。ベルギーのみならずヨーロッパが抱える問題や闇に改めてしっかり触れた気がします。