Maoryu

聖地には蜘蛛が巣を張るのMaoryuのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
3.8
イランの女性記者ラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)は聖地マシュハドで起きる娼婦の連続殺人事件を取材する。警察の捜査が進まないことから、自分が囮となることで犯人サイード(メフディ・バジェスタニ)を捕らえることに成功するが、彼は街の浄化を主張し、それを支持する人々によるデモが起きてしまう。

クライムスリラーながら、特に後半はかなり鋭くイランの社会問題に切り込んでいる作品だ。

女性は情事の噂が出ると悪者にされ、何かで目立てば叩かれ、男の所有物扱いされる。そんな悪しき風習の中で女性たちの人権、存在価値が問われる。
もちろん、狂信的なのは犯人だけど、事件にのめり込んでいくラヒミの行動もかなり盲目的でハラハラさせられる。

そんな犯罪モノから法廷モノに移っていく終盤、妻は夫の行為を称え、子供もそれを信じる。まるで英雄のようにサイードを語る人々の姿は、見てて怖くなっちゃった。逆に被害者家族は声を抑え、“娘は死んでくれて良かった” と言い放つ!
宗教解釈の恐ろしさや、無言の差別が中東独特の雰囲気の中でリアリティを高めてた。

そして、劇中にいくつも出てくる、“死” の顔演技もまた、リアル過ぎて怖かった。
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