「1秒先の彼女」では、DJモザイクの「人生とは沢山の記憶のパズル。恋が記憶を創造するんだ。お互い、相手の記憶に刻まれていたら最高だね。でも君の大切な記憶は相手にとって無意味かも。それが人生だね。」という台詞がその映画の核心を表わしていた。主人公の彼はずっと生きる支えてして抱いてきた彼女の記憶の上に、時間が止まって動かない彼女と自分を写真に撮ることでその記憶を積み重ね記録として紡いだ。記憶こそ人生の糧であり宝であることを示している。
一方、そのリメイクである「1秒先の彼」にはDJモザイクの台詞にあたる件はない。「1秒先の彼」は子供の頃心を通わせてから、彼女はそれを生きる支えにし、彼はそれを忘れてしまい、長い時間止まっていた心の交流が、偶然の、あるいは運命の出会いからもう一度始まる感動に焦点を当てている。その「1秒先の彼」は、原作の「1秒先の彼女」を既に観ていても、それとの比較という雑念に邪魔されず、鑑賞できた。それは、同じ物語を、別の語り部から、別の語り口で聞いているような、心地よいものだった。