いつからだろう、もしかしたら子どもの頃からかもしれないけれど、「香港」に惹かれる。行ったことはないのに、郷愁を感じたり、その情勢に心がザワザワする。沢木耕太郎の『深夜特急』の影響も大きく、人々が自由で経済が潤っていた輝かしい頃の香港をもう2度と観ることが出来ないということが、憧憬を抱かせるのだろう。それは自国への諦念や不安とも重なる想いなのかもしれない。それで、こういう映画は素通り出来ない。
香港の路上生活者たちには若い人も結構いて、助け合いながら何とか生活していた。そこには整備された街並みや高層ビルには見られない思いやりや人間の温もり、人間らしさがあるような気さえした。
薬物依存の治療を主人公が始めたりして前向きな話になるのかという期待も虚しく、暗くて救いがなかった。けれども、そんな人たちに光を当てている貴重な映画で観ておいて良かった。