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えんまさんの消費者のレビュー・感想・評価

えんまさん(2022年製作の映画)
3.6
・あらすじ
17歳の少女、倉田廻麻は社会や人間への不信感と嫌悪感を日々、募らせていた
それには1つの大きな原因がある
彼女には鏡を通して人々の抱える嘘を見抜く特殊な力があるのだ
呼吸する様に嘘をつく周囲の者達も彼らが生きる世界も廻麻にとっては吐き気を催す程に空虚な存在に過ぎなかった
そうした理由で彼女は自ら孤独を選び、人や社会から距離を置いて生きていた
学校ではたまに話しかけてくれる生徒もいたが彼女達の嘘も見えている廻麻はそれを突きつけ拒絶する
しかしそんな生活は1人の先輩である女子生徒との出会いで一変していく
彼女の名は正羅
これまで誰もが嘘を抱えているのを目にし続けてきた廻麻にとって初めて出会う嘘を持たない人間だった
そんな正羅に廻麻は一目惚れする
正羅は同級生からイジメを受けており、出会った時も弁当箱が蹴り飛ばされ、上履きは裏庭の畑に埋められていた
廻麻はすれ違ったいじめっ子3人に見えた嘘からその場所を知っており、上履きを見つけてあげた事で2人は親しくなる
能力の告白を疑う事もない正羅と過ごす中で廻麻は“人間界”へと馴染んでいく
だがある日、体に傷を負って現れた正羅を見た廻麻は彼女を救うべく能力を使って嘘を暴き、“裁き”としていじめっ子達の飲酒と薬物乱用を告発するビラを学校に撒く
正羅を救ったと思い喜ぶ廻麻だったがそれは逆に悲劇を招いてしまう
ビラを正羅の仕業と考えた3人が彼女を鉄パイプで殴打し病院送りにしたのだ
その出来事をきっかけに廻麻の“天誅”はより一層、激しさを増していき…
というサイコスリラー作品

・感想
本作は大学生の卒業制作らしく、確かに芝居や展開にややチープさが見える部分もある
廻麻役の役者の表情演技やいじめっ子を“天誅”として殺害した事がすぐに露見しない事だったり…
しかしストーリーはかなり良く出来ていたし何よりどんでん返しのオチが良かった

嘘が見える事から嘘吐きを毛嫌いしてきた自身の能力もまた厭世観を肯定する為の妄想の産物だった、というラストには驚かされたし、それに至る前に明かされた正羅の実情も良い感じに胸糞が悪くて良い
両親に常に一番である事を求められて生きてきた正羅はかけっ子の順位を2人に偽装した事をきっかけに嘘へと溺れてきた
嘘で人生を塗り固めてきた彼女にとってそれは最早、彼女にとって1つの真実だった…という物
そういう事は現実にもありそうな話だけど廻麻に対して抱いた罪悪感すらも嘘で、彼女に嘘を告白して首を絞めさせた事までも嘘の材料としてしまう、という業の深い行動は邦画らしいジメッとした物でかなり好き

唯一、嘘の無い存在として信頼を寄せ愛してきた正羅を失った事で絶望に呑まれて母を殺害し、”嘘吐き“達を標的とした通り魔殺人に手を染めてしまった廻麻に警察の女性が真実を突き付けていく場面の地獄っぷりも良いラストの描かれ方

全体的に胸糞要素の強い「世にも奇妙な物語」の様な世界観で小規模な作品としては良く出来ていると思う
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