本作は非常に観客を選び、賛否両論が激しくなるのも理解できる作風であった。
全米での評判も決して良くない…
個人的には決して嫌いな感じではなかったが…
フェニックスは前作以上に減量したと見えて、骨の浮き出た身体には恐ろしさすら感じる。
作品の構成がミュージカル仕立てになっており、アニメやサスペンス、瑞々しいラブストーリーなど様々な要素を取り込んでおり、この辺りも全体的な視点が定まらず、前作の醸し出していた独特な雰囲気を期待していた人達の賞賛を得ていない要因なのかもしれない。
しかしミュージカルシーンで愛を歌い上げ、アーサーとリーの結び付きの強さを示しているが、これはあくまで彼の狂気に呼応した彼女の妄想内の出来事にすぎず、彼らの歌や交わされる掠れ声の会話は、狂気を分かつ二人の間しか共有されないものである。
この辺りは自分自身何とも言えない不穏な雰囲気を充分感じられ味わい深いシェークンスではあった。
前作の衝撃性は残念ながらないものの、視覚的な楽しみ、ガガの侘しい存在感とフェニックスの魂の演技、観客を取り込んでいくうねりに巻きこんだ音楽が、ラストに集約されていく時間軸の感覚は見応えが大いにあり楽しめたと思う。