keith中村

神回のkeith中村のレビュー・感想・評価

神回(2023年製作の映画)
5.0
 U-NEXTのポイントがあと少しで何百ポイントか失効するので、何か有料の新作を探していたんだけれど、去年公開された本作のことは全く知らなかった。リードにタイムループものとあったので、興味を持って鑑賞。
 
 切なくて、悲しくて、でも美しくも愛おしい、優しくて綺麗な映画でした。
 タイムループものも、今では進化や変容を続けていて、こんなテーマにも適用できるんだなというところも見事でしたよ。
 
 タイトルが「神回」と今時の言葉になっているのも面白い。いうなれば「我が人生最良の一日」ですね。まあ、そこが翻って実際にはそうじゃなかったってところがこれまた切ないんだけれど。
 
 また本作は「伯父さん・叔父さん映画」としてもよかった。
 別に甥じゃなく息子にしたって全然可能な設定なんですよね。でも、本作では甥になってる。
 ジャック・タチと山田洋二と山下敦弘にそのまんまなタイトルの映画もありますが(もちろん山田・山下両名はジャック・タチにあやかってるんだけれど)、私は何度か書いているように、ヒッチコックの「疑惑の影」が叔父さん映画として大好き。あの映画のチャーリー叔父さんとチャーリーちゃんと同じく、本作も甥のヒロキくんはおじさんの「樹(イツキ)」から一文字貰って「ヒロキ」くんなんだよね。私と一緒だ。叔父の名前を一文字もらってる。
 
 このシチュエーションで童貞の10代男子なら絶対に試そうとする、しかしループものがついぞ描いてはこなかった生々しい例の描写も攻めてるなあと思ったし、ループものがジャンルとして確立してるからこその、中盤までの彼のループを終わらせるための努力や奔走が全部徒労に終わるところも可哀想だけど笑えるエピソードになっていて、もうこの映画全面的に好きですよ私は。
 
 一周目の樹くんのリアクションからすると、彼にとってはそれはすでに2回目以降なんだよね。これも最近のループものでしばしば見かけるパターン。
 
 監督さんはこれが長篇第一作なんでしょうか、中村貴一朗さん。俺と同じ苗字ってのが、なんか嬉しい。
 
 教室の黒板にあれとあれが描かれているってことは、中村貴一朗さんはやっぱノア・バームバックが好きなんでしょうね。
 そういうところも好き。