「"ディズニー100周年の特別な映画です"と宣伝しているんだから、特別な何かを観せてくれると期待してしまっても間違ってなかった筈だよね?」と、観終わった後に思わず確認してしまった程度には残念な映画だった。
何より違和感を覚えたのが作画。
「人がのっぺりしてない?」とびっくりして後で「ウィッシュ のっぺり」でググったら結構出てきた。やっぱりのっぺりしてたよね?
人物がCG黎明期くらいの質感で、時々背景から浮いて見えてしまったほど。どうやら3Dと2Dを合わせたせいでああなったらしい。
確かに昨今のCGアニメって2D寄りがトレンドになってきてるけど、その手法ってあくまで背景や動きにもマンガ的表現方法を取り入れた手法だからこその良さであって、めちゃくちゃきれいな3Dに2Dの人物を重ねてしまったら、そりゃなんか違うに決まってる。ディズニーのアニメーターには絶対的信頼を持ってたのに、どうしてこうなっちゃったんだろ?
ストーリーは結構過激で、ディズニーが大切にしてきた要素のひとつである"Wish"を奪うヴィランという凶悪さはすごく良かった。
危険思考は芽から完全に刈り取るタイプの独裁者で、かなり政治的なテーマにしたなと感心した反面、テーマが大き過ぎてあまり個人的には心に刺さらなかった。「ミラベル」みたいなもっと個人的な共感で号泣してしまうタイプなので。
ヴィランにも不幸な生い立ちがあるようなので、てっきりその辺に少しくらい触れるかと思ったらなかったので、ただの傲慢で恩着せがましいナルシストなイケオジで終わってしまったのも残念。
でもCV.福山雅治なので「無礼な奴だ〜」と歌っていても爽やかな風が吹き抜けた。
歌も舞台ミュージカル的な構成の音楽で嫌いじゃなかったものの、そこまで印象に残る曲はなかった。「♫ウィッシュ」は結構好きだけど、早いうちからたくさん耳に流された曲だったから、ただの刷り込みかもしれないという疑いを持ってる。ディズニーでの実績のない作曲家(そもそもシンガーソングライター)じゃなく、今回に関してはレジェンドたちに頼っても良かったのでは?多分、ディズニー好きが100周年のお祝いに求めていたのはレジェンドの音楽だったと思う。
ディズニーというよりNintendoのキャラとして出てきそうなビジュのスターは、想像していたよりも10倍くらいキュートだった。
話さないしシンプルなビジュのキャラなのに、表情がすごく豊かでニコニコ無邪気で超かわいい。その分、ヤギのバレンティノはちょっと取ってつけた感があった気がする。もっと主人公の相棒として活躍すると思ってたんだけど、アラン・テュディックありきの役だったというか、山ちゃん枠だったというか。
主人公のアーシャも「まあ、確かにこの子かなり厚かましいよね」と思ってしまったので、あまり共感できず。
アーシャの衣装が変わるシーンも「シンデレラ」のあのシーンくらいの感動を期待したのに「実は前髪を5ミリ切りました」くらいの微妙な変化で反応に困っちゃった。
オマージュ要素もなんかワクワクしなくて滑ってる感。実写の本から映画が始まる演出には結構グッときたけど、そこがピークだった。
ところどころの描写でちょっと鬼畜ムーブをしていたのもモヤる。夢が叶うシステムは宝くじ的思考だし、話せるようになったキノコの頭をドラムとして叩いたり、本やクッキーを足で踏みつけたり、産んだタマゴでお手玉をするニワトリが出てきたり...ただしニワトリは短編ミッキーの頃なら許されたかも。
実はそこまで悪くないと思ってた筈なのに、なんか感想を書き始めたらどんどん不満が出ちゃった。自分でも気づいてなかったけど、多分「ワンス・アポン・ア・スタジオ」を上回る感動を期待していたみたいで「ウィッシュ」には残念だった。
それと、過去イチ最悪な家族連れと隣になってしまって、映画の2/3くらい集中して観れなかったせいもある。10個くらい文句言いたいことがあったけど、とりあえずパパとママで来てるのに、ちゃんとひとりで椅子に座っていられなくて足をバタバタしたり椅子の上であちこち向いてしまうような小さい子を、何故他人の隣側の席に座らせて大丈夫だと思ったのか、それだけを聞きたい。そもそも他の席も全然空いてたのに、何で隣に人がいる席にしたんだろ?私の方が確実に先に席を取ってたから分かってた筈なのに...