物凄いものが映っているしアジェンデ時代からカメラを通して国の行末を見つめて来た監督に想いを馳せると本当に泣けてしまう。押し付けられたエセ民主主義国家の民が4年に一度馬鹿みたいに駅前で繰り広げる様な痴態を何百倍にもした様な熱狂的な光景が日常のものとして存在しているチリ、流石闘う国民達だ面構えが違うと素直に感動する。後半は民主化運動にフェミニズムがもたらす意味と力についての言及、一糸乱れず連帯する女性達は美しく強い。極右が壁を築くならそれを踏み倒してみせる群衆の力、大きくは報じられずともベルリンの壁同様の光景がここにはある。そうして権力を手中にした群衆達の頂点に立つものが、在りし日のアジェンデ同様に黒縁の眼鏡をかけていると言うのも出来すぎているし、クーデターで破壊された国を象徴するかの様な彼の眼鏡の行く末を思い出すとこれまた涙が溢れそうになる。誰に主導されるでもなく自然発生的に生み出されたからこそ上からの圧力だけでは到底潰しきれない運動の力強さ、クーデターから50年余り、こうして国は生まれ変わるのだと言う瞬間はあまりにも美しい。