【因習と女性】
古くは市川崑さんの「野火」のグランプリ、最近では濱口竜介さんの「ハッピーアワー」の主演4人(川村りらさん、三原麻衣子さん、菊池葉月さん、田中幸恵さん)に対する最優秀主演女優賞、細田守さんの「竜とそばかすの姫」のキッズ賞の受賞で知られるロカルノ国際映画祭の現在の最高賞である金豹賞を獲得した作品だ。
ヨーロッパに古くから残る因習に着想を得たとなっているが、主には依然として女性に対する差別が残る東欧の田舎を取り上げているように感じる。
女性に対し抑圧的で、従わない場合、暴力的な仕打ちも厭わない。
いわゆる魔女扱いして罰を喰らわすのであれば、神も許してくれるだろうと云う安易な宗教的・因習的な考え方だ。
因習については、地域の特定を避けるために暗示的な表現に置き換えているのだと思うが、女性に対する抑圧は神の名を借りた因習的なものだとすると、こうした場所の価値観の変化はこれからも容易じゃないと暗い気持ちにもなる。
(以下ネタバレ)
最後、シャロータの髪が肩近くまで伸び、ミラ(タマラ)と打ち解けている様子は、オティラの魂によって救われたのだと云う暗示だろうか。
オティラは女性が人として扱われるようにとの願いのメタファーのような存在だったのだろうか。
楽しそうに水浴びする姿は、実は更に山奥の風景のようで寂しさもともなう。
宗教的なものもあってか、因習を暗示的に表現したからなのか、個人的には分かりづらいところもあった。
ただ、ホラーとして考えた人には申し訳ないが、暗示的で興味深い作品だと思う。