【居場所】
静かで多くの人の心に寄り添うような良い作品だと思う。
それに映画「コロンバス」を思い出した。確かこれもイメージフォーラムで初めに上映されたような気がする。
デザイナー住宅が整然と立ち並ぶ高級住宅街で暮らすのは、本当に居心地が良いのだろうか、周りには必ずしもそんな住宅で暮らしていない人もいて、そんな人は本当のところはどんな風に感じているのだろうか、見た目から受ける印象と、実際は違う人もいることだし……など様々なことを考えたことを思い出した。
僕は、この手の作品がなぜか大好きだ。
「ア・ヒューマン・ポジション」とは何だろうか。
ノルウェーも含めて北欧はデザイナーズ・チェア大国だ。
正確にはデザイナーズ家具大国だが、特に椅子へのこだわりは大きいように思う。
この作品の面白さは、椅子に、自らの価値観に向き合い変化する自分の気持ちや立ち位置をかけているところではないかと思う。
大事にされてきた椅子もへたったり、汚れたりするし、他に座り心地の良い椅子があればそちらを求めたくなることもある。
それは、年齢や何かをきっかけに体型が変わることによってそうなるのかもしれない。
強制送還された難民につい調べるうちに湧き上がってくる様々な疑問。
これまで気にもとめていなかったパートナーの心の奥底ににあるであろう意識への興味。
自分に合った椅子を求めるように、自分自身に向き合い、心の中でその居場所を探し求めているのかもしれない。
アスタの思索を回らしている表情が何とも可愛らしく感じる。
若者とはそうしたものだ。
そして、多くの人がそうなのだと思う。
決して堅っ苦しい作品ではなく、椅子の型式69という番号についての笑える女子トークもある。大概、こんな場面で声をあげて出して笑っているのが僕ひとりだったりするのはちょっと恥ずかしい。
とても素敵な作品だと思う。