クリアーなパンフォーカスで捉えられたノルウェーのロングショットから本作は始まる。このロングショットでは木々の揺れのような俗っぽく言えば美味しいポイントも入れない。もはや、写真と見紛うほどに動かない固定ショットだ。そこからしばらくはパンフォーカスによるショットが続くのだが、椅子を工作するショットを境に後景にボヤがかかる。ここでの前景と後景には切れ目が生じているとも言える。このショットを境にパンフォーカスの稠密なショットに切れ込みがかかるようになる。
本作は類似したアングルのショットが繰り返し挿入される作品となっているが、後半に進むにつれて対象に近づき、対象にフォーカスがかかるようになる。
また、繰り返し通るジグザグ道のアングルを切り替えたショットも登場する。他にも、小津映画を音のみで示すシーンなど、接近以外の方向性での切れ込みも多い。
この、切れ込みにやる落差が本作における強いポイントであるように思える。構図的な反復による差異という一般的な描写法ではなく、異なるアプローチをしたことにより差異から離れたイメージを示すことに成功したと言っても良いのではないだろうか。