追光動画の新作です。相も変わらず高クオリティすぎるアニメーションとアクションの連打で大変気持ち良いし、ラストバトルでのアニメーションにも感服はしたんですが、登場人物の整理とストーリーの浅さが気になりました。

電影祭にて「新封神演義・楊戩」感想
https://tea-rwb.hatenablog.com/entry/2022/12/22/123000

• #アニメ映画抹茶

　追光動画の新作で、『新神榜 哪吒重生』と同じ世界観。今度の主人公は楊戩である。

　『ナタ転生』同様、古典の再解釈やミックスがかなり高度で、だいぶハイコンテキスト。確かに知らなくても楽しめるのだが、何の説明もなく魔家四将や申公豹が出てきて人物の多さにクラクラするし、会話（思い出話）に付いていけない時がある（※）。そもそも主人公の楊戩からして、フジリュー版『封神演義』のおかげで一応知っているという人は多いだろうが、本場ではさまざまなお話に登場するスターであることは、あまり知られていないだろう。
　本作のストーリーは、『宝蓮灯』という日本人にはあまり馴染みがない神話を下敷きにしている。人間と結婚した妹を楊戩が華山に閉じ込めるが、息子の沈香が修行して楊戩をついに倒し、母親を救い出すという話。つまり原典では楊戩は悪役なのだが、本作は「実は…」という設定を付け加えて、楊戩を主人公として活躍させる。

　下界を舞台にした『ナタ転生』のスチームパンク風世界観を踏襲しつつも、『楊戩』では神仙界の描写にサイバーパンク感を足している。こうした当世流の世界観において、中国の神様や妖怪たちが新しい解釈（キャラ付け）をされて、3DCGで生き生きと描き出されている。例えば主人公の楊戩は妖怪退治という従来のイメージを保ちつつ、金欠のダウナー系賞金稼ぎとして生まれ変わる。今更中国アニメーションの3DCGのクオリティについて言及する必要はないだろう。
　太極図に囚われた後に画面が水墨画風になる演出も素晴らしい。楊戩が幻術を半分破ってからリアル→水墨画になるのだが、これは太極図が筆で描かれているのだから理に適っている。
　お話は、後半はやや混乱させられるのだが（結局何だったんだあの人）、全体としてはスピード感に溢れ人を飽きさせないエンタメ大作である。追光動画作品としては『ナタ転生』『白蛇伝：縁起』以上に楽しめた。というか、中華アニメ独特のクセに慣れてきた。また、個人的には、よくある日常に戻った後のエピローグが存在せず、クライマックスからそのままエンディングに入るのが良かった。

　最後に追光動画の新作の予告を流していたが、李白を主人公にしたもので、これまでのファンタジーバトルものとは違った雰囲気だ。引きつづきグランドシネマサンシャインが上映してくれることに期待。

（※）自分が特に分からなかった点：申公豹が倒されるときに「兄弟子よ」と言うところ。本作に姜子牙は登場しない。事の真相は、玉鼎真人（楊戩の師匠）も十二大師だから申公豹の兄弟子に当たるということだった。

2週間ぶりの映画館です…😷✌️
中国の3DCGアニメではかなり好きな方。
『ナタ転生』や『白蛇 縁起』がそこまでハマらなかったから追光動画あまり期待していなかったのだけど、いつも引っかかる要因であるヒロイン像も、ヒロインがまともに出てこないからか今回は気にならない。純粋にアクションを楽しめる（これがまたスピード感がすごい）。美術がすごい。特に冒頭の、伝統的×最新ガジェットが組み合わされた世界観は圧巻。チェイスに巻き込まれる街人が度々映されるのだけど、そのときにこんな非現実的な町にも生活があるって感じられる。