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トレンケ・ラウケン Part1のJellyfishのレビュー・感想・評価

トレンケ・ラウケン Part1(2022年製作の映画)
5.0
アルゼンチンはブエノスアイレス郊外の街 トレンケ・ラウケン (「丸い池」という意味らしい)。そこで失踪した女性ラウラの謎を追う、パート1、パート2、各2時間強の、衒学的でスリップストリームな物語。

目立つのは女性たち。パート1では二人の男性がラウラを探すのだが、物語を駆動するのはラウラを始めとする多くの女性たち。男性二人はただの傍観者に過ぎない。
そして、視点が変わるパート2 においては何をかいわんや、男性たちは遠い背景と化し滑稽ですらある。

何の確証も無いのに真実らしきものを語り、騙る二人のパート1。それを置き去りにして、全く別の層、別のラウラで話が進むパート2。
ナレーション多用ながら、その扱いがスマートで全く興がそがれない。最後の最後、2段階の映画的趣向が待ち受けるラストも見事。

『TWIN PEAKS』や『アンダー・ザ・シルバーレイク』といった考察系とも違う (「そういうのがやりたい訳ではない」というのが監督のインタビューからも伺える)、南米お得意のマジック・リアリズムとも違う、もっとアップデートされた何か。
奇妙な味わいを演出するクラシック音楽使いも、音響も、編集も、全てがハイレベル。

終映後に残るのは、昨年の『王国 (あるいはその家について)』の様な、何かとんでもない物を観てしまった感覚。
ただ『王国』同様、長いのと、これでもかという長回しの多用が玉に瑕。全体で3時間に収まっていたら文句なしの年間ベスト級。しかし、『王国』もその長さゆえランク外にした昨年の過ちを、今年は繰り返すまい。

終映後に、国内上映の企画化と字幕を担当した 新谷和輝 氏 (ラテンアメリカ映画研究者) と、山中瑶子 氏 (映画監督)とのトーク・セッションあり。初の生 山中瑶子 監督にちょっと感激。

プチ情報:
「カルメン」役で監督の ラウラ・シタレラ が出演。「チーチョ」役を演じるのは監督の夫。

Filmarks さん、ポスタービジュアルはよ。
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