ブラックユーモアホフマン

トレンケ・ラウケン Part2のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

トレンケ・ラウケン Part2(2022年製作の映画)
4.5
ラジオのテープを聞きながら文字通り彼女の体験したことを再生する後半。ラジオ映画でもある。

上映後トークで鈴木史さんは『トロピカル・マラディ』の名前を挙げていたけれど自分はまだ見ることができておらず、しかし植物の研究をしていて、しかもなんかやたら寝るシーンがあって、UFOとかのキーワードもあったから、自分は『MEMORIA メモリア』のことを思い出したりしていた。あれも聞いた音を再現するシーンがあったりで、音声メディアを使ってる感じもなんとなく共通するというか……。だんだん動物になっていってしまうのとかも『ブンミおじさんの森』然りアピチャッポンっぽいよなあと思ったり。

2階になんか得体の知れない何かがいるらしいぞ、みたいな想像力はちょっとJホラー的というか……いやというよりも「くだんのはは」的か。

そして最後にはシネスコになり、西部劇のようになっていって。なんとなく『ノマドランド』を思い出したりして。あの「アメリカ」っていうのはそういう地域の名前なんですか? アメリカ映画について監督はどういう認識なんだろうと思ったり、何にどう影響されてこんな映画を作るのか気になる作品でした。

最後のパン問題、僕はアリです。なくてもいいと思うけど、なくてもいいことをわざわざやっちゃうのがむしろ逆にいいじゃないですか。野暮と分かっててやる美学というか。引き算の美学はカッコいいけど、なんかカッコつけてんな、ってシャクな感じもするんですよね。だったらむしろどんどん足しちゃえ!っていうのも逆に潔くてカッコいいと思うんですよね。
てかこの映画、全編にわたって余計なことしかしてないというか、前半の往復書簡の話とか本当に何でもなかったし、「なんでもない」ってことの説得力のためにあの尺使う!?みたいな信じられないことしてるし、だから最後まで余計でいいんですよ。しかもパンで行って戻った後に、ほんのちょっとだけ画角調整するでしょ。←いって→戻って、最後ちょびっとだけ←にズラすじゃん。あんなの普通NGテイクですよ笑 それをわざわざ使っちゃうようなカッコついてなさ、ダサさは多分狙ってやってるんだろうな。チャーミングだし、なんか逆に崇高さすら感じました。

【一番好きなシーン】
二階の部屋。なんだろう、『ホーム・アローン』の泥棒を罠に嵌める仕掛けとか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』冒頭のミニチュアみたいなワクワク。