F亮

夜明けのすべてのF亮のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.7

現状今年ベスト級。今年のトレンドは“静かな優しさ”かもしれない。

月経前症候群に悩まされている藤沢さんとパニック障害に苦しんでいる山添くん。そんな2人を中心にした、とある居場所でのお話し。

まずメイン2人の持つ苦しさ、辛さ、怖さ。それらを映画を通して説明する力の見事さに感動。映画が中盤に入った頃にはすっかり、2人と2人を取り巻く世界に心が浸かっている。
すると不思議と2人を取り巻く世界にいる人々が持つ何かにも自然と視点があっていく。
ああこの人は過去に大切な人を失ってしまったのだ、とか、この人はこういう素晴らしい価値観を自然と持ち合わせているんだ、とか。

作中の山添くんのように映画が終わったあと自然と自分を取り巻く世界の中にある優しさ美しさに気付けている気がする。そういえば監督の前作『ケイコ 目を澄ませて』も鑑賞後世界の美しさに気付ける映画だった。

個々人が持つ苦しみや病理、それらを他人が完全に理解できることはないのかもしれないし、理解したつもりになるのは傲慢なことだけど、理解をする努力は絶対に必要だし、山添くんが言うように、数回くらいは誰かを助けられる瞬間があるのだろう。

「あら〜いいのよ気をつかわなくて。でも私コレ大好き。ありがとう」なんて素敵な返事。
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