このレビューはネタバレを含みます
人と関わり合う中で変わっていく尊さを改めて感じた
生きていく中で誰もが何かを抱えている
月並みなテーマではあるが、静かに淡々と、また嫌な部分、知らなければ不快に思ったり傷つけ合う面も臆さず描いているのには感嘆した
実際、自分の余裕のないときに見たら、登場人物たちのことも俯瞰して見られずに嫌いになる部分もあるのではないかと思うほどにはリアルである
ただ普通ならば見えない、気づかないかもしれない彼らや重なる私たちが懸命に生きる点も映画ならではの脚色を加え描くことで許容と受容、溶け合いを表現しているバランス感覚も上手いと感じた
この作品で初めて知った症例やバックグラウンドもあることで現実の知見も広がった
自身に重なる点も徐々に気づき、一人生きることの難しさ、さらに一歩同じように抱える何かを思いやる心を感じて肯定、背中をを押されたようにも思う
孤立しやすい現代社会において他者の存在を肯定的に描く良作
自分に人と違う部分、負い目があるからこそ遠ざけてしまう、棘を出してしまうというのも覚えがある描写だった
気遣われたり、優しくされることで自身の異物感や罪悪感が降り積もる感覚も思い出した
逆に何事もないのに被害者意識が表面化したり、白い目を向けられている感覚も
邦画らしい丁寧な画作りと言葉選びも美しい
パニック障害関係なしに(なにか遠因や関連はあるのかもしれないが)少し変わる前の山添がガチで嫌いなタイプで少しキツかった、ただ少し変わる、変わり続けるというのも大事なのだとも思う
そのキーキャラクターとしては物語上に必要
またその変わりよう、恐らく笑顔の芽生えと成長に辻本さんが涙したのもわかる
辻本さんは最初の印象はなんとなく実は嫌な奴なのではと思ってたけど、そんなことはなく、ちゃんとバックグラウンドもあるしこの涙と表情で逆に好きになってしまった
二人が恋愛関係とかにならないのも良かった、助け合う関係というだけだし、それで十分という充足感
柔らかく日々を一歩ずつ歩むような音楽も良い