【夜明け前が一番暗い】
三宅唱監督×瀬尾まいこ原作×上白石萌音主演×松村北斗の2024年の作品
〈あらすじ〉
月に1度、苛立ちを抑えられなくなる藤沢は、ある日、同僚の山添を怒ってしまう。やる気が無いように見える山添は、パニック障害を抱え生きがいと気力を失っていた。理解のある職場と同僚たちに支えられながら、ふたりには同志のような気持ちが芽生えていき…。
〈所感〉
三宅唱監督は4作目かな。それぞれPMSとパニック障害を抱えた二人の男女に焦点を当て、彼らにとってのごく当たり前の日常風景を切り取ったフィルムであり、物語自体は淡々としているんだけど、他の方も言うようにヒーリングミュージックのような癒しがもたらされる作品だった。私は女性ではないのでPMSについて全く理解が不足していたので、上白石萌音演じる藤沢の自分の身体が自分の物ではないような感覚、普段以上に神経をとがらせて急にキレてしまうような症状などがあることを学習するよい機会になった。松村北斗演じる山添は最初病気とか関係なくいけ好かない男だなぁと思っていたが、藤沢の症状に対して徐々に理解を示し、積極的に本を読んだりして、彼女を手助けするようになるところから好感を持てた。同じ症状の人はいないし、身体が他人のものである以上それを完全に理解することは不可能だ。それでも、人には人それぞれの痛みがある、自分が苦しい時は誰かが苦しいのだ、なんて考えれば、分かり合えないにしても歩み寄ることはできるのではないかという可能性を見せてくれた。ラストで不自由な身体を宇宙の話に絡めて、それでも地球は回っている的に纏めるのは少々ベタだなぁと思ったが、小さな町工場とそのユルい繋がりを描いた本作としてはこれ以上にない締めくくりだろうと思った。ただ、上白石萌音の演技がリアルすぎて、正直こんな女性が身近にいたら、自分は支えられるだろうか?と不安にもなった。
《2025年 31本目》