わりと評判を呼んだ清水崇映画。
おじさんはメンディーしか覚えられない名前ネタは、ベタだし、くどいけど笑える。実際、メンディーがやられるところがいちばん怖かった。彼は表情も声もいいですね。ハーフ顔でガタイのいい厳ついあんちゃんなのに、めっちゃ怖がりなのが萌える。次世代スクリームクイーンはお前だ!
清水崇映画において、霊魂と時間は密接な関係にある。人に害をなすほどの心霊とは、「強烈な過去の記憶のなかに取り残されたもの」として描かれる。生前のそのままの魂魄を持った幽霊ではなく、感情や意思の欠如したある種の妖怪化したもの。
だからこそ、クライマックスでは生者が物理的・精神的な方法でもって過去に干渉し、呪いという厚い皮におおわれた悪霊の魂の核心に触れることで、その霊の持つ毒性を癒して事態を解決するか、或いは更なる深淵に誘われミイラ取りがミイラになっちゃったりする。心霊というものの解釈は、呪怨のころから一貫していらっしゃいます。
本作で、霊魂に共感して利他的な救いの手をさしのべるのはマネージャー役の早見あかりなのだが、ジェネレーションズの映画なのだから、仲間を救うためにメンバーの誰かがその役割を担うほうがよかったと思う。
それに、歌というものが題材なのだから、「彼らは陽の表現者として呪いの歌に打ち勝ったのだ!」とするほうが綺麗じゃないかな?女子中学生に抱きついて階段落ちするクライマックスの絵面が、男性アイドルグループ的にダメだったんだと思われるが…。
この映画の悪霊のお嬢ちゃんは、生前のおこないからして普通に邪悪で罪深くて同情の余地がないので、改心とかしない系だと思ったんだけどな。なんか、成仏したっぽいすね。なむなむ。
心霊描写については、過去のジャパニーズホラーのいいとこ取りのセルフサンプリングが主。過去作品のオマージュ満載でオバケが出てきて楽しませてくれる。
悪く言えば旧作の焼き直しなので、たくさんホラーを観ている人にとっては目新しさはないけれど、まったく新しい何かではないからこその安心感がある。
これが、エグザイルの弟分的として発足したLDH系グループの成り立ちとリンクするため、彼らの主演映画としては、セルフサンプリングなスタンスはむしろ的確ですらあると思う。
清水崇ホラーは、時代とか状況とかによって、観客に受け入れられるか受け入れられないかの違いであって、呪怨のころから基本形は「オバケだ!ドーン!」の一本調子の一辺倒。それでも、僕に言わせてもらえばファンの期待には毎回かなり高い確率でこたえている作家だと思うから、これからも見続けていきたい。