今日は沖縄慰霊の日です。
・丸木位里、俊夫妻が沖縄戦の図を描いた経緯や作品解説をまとめたドキュメンタリー。河邑厚徳監督による書籍の方が内容は遥かに詳しく(買ってしまった)、そもそも絵の迫力は直接の鑑賞に勝りようがない。絵そのものの評価は抜きにして、映像作品としては無難な仕上がりではある。
とはいえ、「部外者」である丸木夫妻が沖縄戦を学び、沖縄の人と重ねた対話を振り返ることで、作品だけでなく沖縄戦がどんな戦いだったのか、生々しく知ることができる。
・14作の絵を「久米島の虐殺」から始めた丸木夫妻の問題意識がよくわかった。早々に米軍の占領を許した久米島では、島民と米兵が結託するのを恐れた日本軍が、住民にスパイ容疑をかけて惨殺していったという。
天皇を中心とした秩序体系と、それを沖縄に植え付けた皇民化教育が島民を悲劇に巻き込んだ。久米島では秩序の崩壊を恐れた軍人が暴走し、集団自決では島民への教育の「正しい成果」が発揮された。家族同士が大義名分の為に殺し合うという最悪の非条理。
ラストを飾る読谷三部作は、教育に対するスタンスの違いが強烈に描かれる。鬼畜米英との教えを信じて85人が亡くなったチビチリガマと、ハワイ移民の言葉を信じ、全員が脱出した無人のシムクガマ。何が悲劇を生むのか、答えは明確だ。
(米軍はむしろ、今の沖縄の生活を蝕むものとして批判的に描かれている)
・作品を展示する佐喜眞美術館は、先祖代々の土地を美術館にするとの名目で米軍から返還され、普天間飛行場に食い込むように建てられたという。文化による暴力や忘却への抵抗を体現した場所だ。
そうしたテーマを踏まえると、沖縄戦を題材にした民謡を歌い継ごうとしている若手演奏家のくだりは重要だと思った。Filmarksでは蛇足という評価が多いようだけど、沖縄戦を直接経験していない人が芸術を通して歴史を語る責任や、「自分が歌っていいのか?」と悩む彼女の姿は、丸木夫妻が制作時に直面した難しさとなんら変わらない訳で、夫妻のような文化活動を受け継ぐ葛藤を収めたシーンだったのでは。