【過去にすがる】
かつての恋人を忘れることが出来ないなんて多くの人に共通することのように思える。
エトルリアは、現在のイタリアのローマ市のあるところを中心に広がっていた都市国家(群)と言われていて、古代ギリシャにも似た高度な文明を有し、その後、帝政ローマと融合して、消滅したとされている。
僕のイタリア人の友人もそうだが、古代ローマから続くイタリア文化には過剰なまでの自信を持っていて、シーザーが赴くまではフランスもイギリスもヨーロッパの辺境だったと見下すようなことを笑いながら話す。
だが、もしかしたらエトルリア人が起点かもしれないのだ😁
僕は「幸福なラザロ」が大好きで、この作品も期待していた。
かつての恋人を忘れられず、その幻影を追い求めるストーリーは、ギリシャ悲劇の「オルフェウス」にヒントがあるらしい。
現実と幻影が溶け合う感じや、エンディングの地下から微かに空いた穴を通して毛糸を手繰り寄せ繋がる感じは、冥界とこの世を繋ぐ感じで少しドキドキするし、切なくもある。
イタリアのトスカーナを舞台に、エトルリア人の残した遺物を探すイギリス人の男という設定は、何か現在のイタリアに対する皮肉も含んでいるのだろうか。或いは、既に過去となってしまった「本当はイタリア文明とは言えないエトルリア文明」にすがるようにして誇りを繋いでいることはイタリア人の幻想に過ぎないのだと言っているのだろうか。
ただ、本当は、過去にすがってしまうのが人間らしいのだと言っているような気もする。
映画を観た後、あれこれ想像が膨らむ面白い作品だった。