元空手部

墓泥棒と失われた女神の元空手部のレビュー・感想・評価

墓泥棒と失われた女神(2023年製作の映画)
4.2


記憶的な視点ショットがプライベートフィルムに近いフィルムの粒子で捉えられており、従来の映画ではこれは心情やごく個人的な視点を表す作用として働くが、本作では早々に汽車が挿入されることで違和感が生じる。間欠運動を模したかのような汽車内の描写がさらにこの違和感を強固なものにさせていく。
また、本作において黒みとは黒い色のショットではなく、影として示されている。レンズを覆う影としてだ。早回しショットもそうだ。
この違和感とは、どことなく機械的な不自然さであり、随所に見え隠れしている。単なる情景ではなく、機械的な撮影を経たことがわかるように提示されている。
また、女神像も視点ショット的な沈みゆく様と外観の2つのショットで構成されているなど、単線的なショットの連鎖として提示されていない。この、視点と外観を交互に挿入するショット構成は視点の同一化を阻む。常に我ならぬ誰の視点として見出さされる。
そして、これら共感を阻む演出の意味はラストになり見出される。『幸福なラザロ』と同じく、宗教的な寓話として。
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