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関心領域のAPのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

話題の一作。率直な感想、なんか映画を観た感があまりなかった。多分相当生々しかったからかも。そもそもユダヤ人ではなく"暫定的に勝ち組"視点のホロコースト映画をあまり観たことなかったのもある。("ヒトラーのための虐殺会議"を観ていたらよかったらしい)

この生々しさも今までの映画とは違う感じがすごい。歴史を知っているから観ていられる作品でもあり、加えて聴覚と想像力でグロさを伝えてくる斬新さ。ブツ切りな映像も相まって。壁の向こう側を一切見ることはなかったのに良い気分ではない。

あの場所で生活する人からしたら黒煙も銃声も日常、映画内ではただの背景であり触れられもしない。終始淡々としてこれといった大きな展開もないのが嫌な雰囲気を醸し出していた気もする。

だから遠方から来たお婆さんの反応が妙に親近感あるというか、「楽園」「あなたは運がいい」という言葉を発するあたりからそう感じた。そして外の様子を知ったうえである日姿を消していたあたりからも間違いなくこの人の感覚が一番我々に近いと思った。

同時に「やはり見て見ぬふりしかできないのか」と感じたし、残念ながらリンゴを配る少女には決してなれないと感じてしまった…。

子どもを寝かしつける場面に差し込まれる命を懸けた行動、これを「バレたらどうすんねん、怖い」とか思いながら見ているうちは平和ボケしているのかと思ったりする。

そして平和ボケとまでは言わないが将軍の家族はなんと優雅な生活だこと。ある程度の権力があれば家族の転居は阻止できるというのも驚き。ほんまにそんなことあったんやろか。

将軍様への対応に至ってはブーツひとつ脱いだらすぐに掃除して、別の者が家の中に片付ける。将軍様が外に出る頃には飲み物1杯注がれてテーブルに置かれた状況。徹底されてんなと思った。
ラストのブーツの山は焼却炉に入る前に脱がされたやつなんかな、そことの対比がまた悪意ある。

環状焼却炉と訳された効率化を求めた施設の存在も驚き。ハンガリーからの輸送が大変だとか言っていたが結局ドイツ側は労働者がほしい?殺したい?どっち?
軍の偉い人達が集まって「効率の良い輸送(殺害)」について話し合っているとしたらこれまた気持ちの悪い話。

終わり方も含めて不完全燃焼ではあるけど、人生何事も終わりを迎える完全な状態になることの方が少ないと思えば、ますますこの映画の生々しさが嫌いになるなと感じた。

というかまだまだ気づいていないことが多すぎることも間違いなし。これも何気なしに観てた。口紅が高級品という認識はあったが、コートが略奪したものとは分からなかった。で、なんでこのコートが略奪したものって分かったんだ?この映画めちゃくちゃ深い…。
https://x.com/nico40984150/status/1794935080433143869?s=46&t=8NmBVxwCHZ73OGPcLNCQyg

久々の映画でこれはしんどいです!ひょこひょこついてくる犬が癒し!豪快に走り回る犬が癒し!畑に悪さをしたと思われる犬が癒し!


追記
あー、これもなるほどすぎる。婆さんだけじゃなくて子どもも寝付けないのはそういうことやったか🤦‍♂️
https://x.com/nico40984150/status/1795610719943303204?s=46&t=8NmBVxwCHZ73OGPcLNCQyg
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