観る前は2000年代ビデオショップ版『ニュー・シネマ・パラダイス』のようなお話かと思ったら、主人公が映画マニアになった『ゴーストワールド』であり、はみ出し者たちによる『アメリカン・グラフィティ』だった。
高校卒業が迫るなか、主人公ローレンスは憧れのNYUに進学の学費を稼ぐため地元のビデオショップでバイトをすることになるというストーリー。
高校卒業後に何をするのかはのちの人生に大きな影響を与えるだけあり、それをテーマにする作品は数多いが、今作は映画がすべてだった主人公がそこから新しい世界へと踏み出していくという非常にパーソナルなお話になっているのが興味深い。
他者を見下し、親に反抗する、まさに10代思春期まっしぐらの主人公はかなり好き嫌い分かれる性格だと思うが、ラストのローレンスを見ればきっと彼のこの先の人生が良いものになっていると確信した。
今作は映画が大好きな青年のお話だけど、これは他のあらゆるジャンルにも当てはまると思う。大好きなものに熱中しすぎるあまり、ほかの何かを蔑ろにしてしまった、あの頃の不器用な僕らに贈る素敵なヒューマンドラマだった。
