【静かなエネルギー】
この「国境ナイトクルージング」は、若者はどこでも似たようなことで悩み、あがき、それでも前に進もうとするのだと伝えようとしているのだと思う。
海外では一定の高い評価を得ている作品だ。
変な邦題のせいで北朝鮮国境をかなり意識してしまうかもしれないが、中国語タイトルは「燃冬」、英語タイトルは「The Breaking Ice」と、どちらかというと、物静かなストーリーの中で何かを突き破ろうともがく若者の心の奥に潜む静かなエネルギーを感じさせるものだ。
もし邦題タイトルを擁護するのであれば、生まれ育った場所によって境遇が違ってしまうということを想起させるところくらいかと思う。
悩みをかかえたまま意気投合してしまうこと。
好きってわけでもないのに勢いでセックスまでしちゃうこと。
ジェラシーなのか、本当に好きなのか。
過去のキラキラした自分と現在のくすんだ自分。
逃げてきた過去とその延長線上に立っているに過ぎない自分。
逃げ出したい自分と抗わなくてはならないという気持ち。
こうした矛盾も含めた感情や状況に翻弄されることは、全部とは言わないまでも、多くの若者や、若かった時の自分に当てはまるという人は多いように思う。
僕もそうだ。
さまざまに交錯する想いが、氷を突き破るように、息が凍るような寒い冬であっても熱い気持ちを呼び起こすように若者は前に向かおうとするのだ。
こうした若者の葛藤は普遍的とまでは言わないが、世界中で誰もが経験し、抱えるものだと思う。
海外で一定の評価を得られてるのは分かる気がする。