アメリカの片田舎。悪ガキ3人組は最新のゲーム機を盗み出してゲームをしようとするが、テレビにパスワードがかかっていて遊べないことが判明。風邪で寝込む母親からパスワードを聞き出そうとするも、「ブルーベリーパイを買ってきてくれたらね」という条件を出されてしまう。仕方なく買いに行くとパイ屋はお休み。なんとかレシピを聞き出して作ろうとするも、最後のひとつの卵をおじさんに取られてしまった。絶対に卵を奪い返す!と後をつけてたどり着いた小屋を覗くと、どうやら様子がおかしくて……。
『やかまし村のこどもたち』と『グーニーズ』を合わせて悪ガキ度を上げたようなキッズファンタジー。現代の話ではあるものの、16ミリフィルムの質感や牧歌的な風景がノスタルジーを感じさせる。
倫理的にギリギリアウトを狙った悪ガキ度はブラックジョークが効いていつつも、全体的にファンタジックにまとめているので露悪的ではない。個性豊かでキュートな子どもたちの生き生きとした表情に魅せられつつワクワクハラハラしているうちに、母への愛や孤独といったセンチメンタルな要素にホロっときたりもしちゃう。なかなかどうして、よくできたキッズムービーじゃないの。
私は子どもの頃に児童書を読み漁っていたタチなのだが、中でも『秘密の花園』や『はてしない物語』といった孤独な少年少女たちの物語や、リンドグレーンの作品群(特に『やかまし村』シリーズ)が大好きだった。本の中の子どもたちと友達になって、一緒になって笑ったり泣いたり罪悪感に苛まれたりしたものだ。本作は、そんなあの頃の気持ちを思い出させてくれた。
子どもの目を通した使命感、子どもの目を通した大冒険、子どもの目を通した善悪の境目、子どもの目を通した危険と安全の判断基準、子どもの目を通した魔法のリアリティ。大人になってからとは全く違う、それら「子どもの目を通した」世界の眩しさたるや。かつては私もこうだったという懐かしさにクラクラして、今となっては絶対に戻れないあの頃の特別な日々を想って切なくなった。
小さいころに本の虫だった人ならば、きっと楽しめるはず!おすすめ。