こなつ

Floating Holidays フローティング・ホリデーズのこなつのレビュー・感想・評価

3.3
無名の監督が世界中の映画祭で37賞を受賞した作品という割には、レビューの評価があまり良くない。自宅に近いミニシアター系映画館の上映だったので、どんな作品なのだろうと興味から鑑賞。

劇場のロビーに入るや否や驚いたのは、ズラリと並んだお祝いのスタンド花。こういう光景は映画館ではあまり見たことがない。俳優さんへというより、作品そのものへのお祝いのようだった。業界の力の入れようの大きさとでもいうのだろうか。

東京の会社で適応障害と診断された女性・みか(小澤真利奈)が叔母のいる福岡で療養することになった。久々に再会した奔放な弟・まさゆき(武田航平)に振り回されながらも、自然豊かな美しい町で周囲の人々と触れ合い再生していく物語。

大きな事件がある訳でもなく、感動秘話がある訳でもなく、どこにでもいそうな姉弟という関係の日常を切り取ったような作品。世界の映画祭でどこが評価されたのかは良くわからないのだが、舞台になった福岡県うきは市の映像はとても素晴らしかった。

福岡県南部の耳納連山と筑後川の間に位置するうきは市。赤い彼岸花が所々に咲いて印象的なつづら棚田。山の中腹に建つ浮羽稲荷神社の赤い鳥居が延々と連なる急な階段が本殿まで続いている美しさ。川一面に飾り付けられた泳ぐ鯉のぼり。歴史を思わせる白壁の街並み。あぁ、行ってみたいと私でも思うのだから、外国の人は日本って何と美しいところかと感動したのかもしれない。

フローティングホリデーという言葉は知らなかったのだが、海外では有給休暇とは違い、自分で会社にリクエストするそういう制度が良く使われるらしい。

会社でリーダーを任された事で、大きなプレッシャーに押し潰されて適応障害になった姉、大学を転々としながら仕送りをパチンコに使い込み、遊んで暮らしているだらしない弟。それでも姉弟は、不器用ながらお互いを思いやる。現代社会を象徴する病気と今どきの家族の関係性を淡々と描いているハートフルストーリーだった。
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