「この日々を、きっと忘れない」
1970年のボストン。クリスマスが迫り、生徒や教師たちは休暇を家族と過ごすため帰省する。だが複雑な家庭に育ったアンガスのように家に帰れない生徒もおり、嫌われ者の堅物教師ポールは彼らの子守り役を任された。息子を亡くした料理長のメアリーと共に、3人は置いてけぼりの2週間を過ごす。
試写会にて鑑賞。オスカー複数ノミネートということもあり個人的に期待していたが、それを大きく上回る秀作!!既に今年で1、2を争う素晴らしい作品。
“クリスマスは家族で過ごす”という慣習があるから、帰る場所がない=負け組、のレッテルを貼られた3人。頭の堅いおじさん教師ポールと、親が再婚し、新婚旅行に出掛けてしまったアンガスと、息子を戦争で亡くした母親のメアリー。年齢、性別、人種、性格、何から何まで違う3人は、最初はずっとぎこちない。特にポールとアンガスの相性は最悪で、頑固オヤジと思春期男子は互いを理解しようとする素振りも見せず、まさに地獄の2週間になると思っていた。
でも、そんな3人に共通していたのは“孤独”。それぞれに悩みや問題があって、境遇は全く違うけど、心の奥底にあるさみしさには、皆少しずつ親しみを感じていた。教師としての役割を自分なりに全うしようと、アンガスを街へ繰り出すポール。相変わらず言うことは聞かないし、生徒に知られたくなかったような姿や、秘密を知られてしまうこともあって全然うまくはいかないけれど、ポールなりの不器用な優しさは、アンガスの孤独を少しずつ埋めていく。そしてそれは、“絆”へと形を変えていく。
そんな、似てないけれどどこか似ている3人が段々と寄り添って生まれていく絆がとても愛おしく描かれるのがこの作品。心に重荷を抱える彼ら同士のやりとりは、心の痛みから目を背けるような痛快さを持ったユーモアに溢れていて、微笑ましく、おかしく、時にブラックに、作品全体に親しみを与えている。その中で、ふとした瞬間に見せる切なさが身に沁みて、忘れられない2週間を過ごした彼らを、我々もまた忘れられなくなるほど、人間としてとても魅力的な存在に映る。ポール・ジアマッティ、ドミニク・セッサ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、👏👏👏