初めての濱口竜介。タイトルバックに始まり、ちょいちょいゴダール風味。
フレームにどの情報をどの順番でどの程度入れていくか(音も含めて)……どのショットも計算されつくしている。あからさまでない仕方で、不穏な感じを蓄積していく。
ショットを単体で観ても惹きつけられるものが多く、とりわけ「だるまさんが転んだ」は実に印象的だった。これは実にゴダール感がある。
ストーリーもシンプルながら緩急がうまく付いていて観客の興味を切らさないようにできている。子役の使い方もうまい。終盤まではずっと癒やし要素として機能している。
説明会の住民側の懸念などはリアリティがあり、雰囲気(アート)全振りでもないのかなと思ったものの、コンサルや社長を筆頭に東京側の人物造形がちょっと漫画チックだったか。戯画化がちょっと行き過ぎている気はした。
説明会の後に事務所側の男女に視点が移り、彼らの当たり前の「内面」が披露される。なるほど悪は存在しない。だが問題は消えない。
主人公もちょっと村上春樹的な生活感の薄い人物であるが、彼の捉えがたさが観客の興味を持続させているのだろうし、ラストを考えるとこれくらいが良い塩梅なのだろう。