このレビューはネタバレを含みます
日本語タイトルは『あの歌を憶えている』。25年の2月21日公開。『父の秘密』『ニューオーダー』のミシェル・フランコの新作。
どういったら良いのか…。まず厭な映画ではない。どちらかといえばラブロマンスの映画といえる。
主人公のジェシカ・チャスティンは知り合いになったピーター・サースガードに、いきなり「あなたはわたしが10代で同じ学校の生徒たちにレイプされたとき、その場にいたわ!加害者ね!」と猛烈に怒る。サースガードは数分前の記憶をなくしてしまう健忘症にかかっていて、そういう過去があったかどうかわからず、部屋を出ていく。するとサースガードの妹がレイプの時期を尋ねて、チャスティンが答えると、「わたしたち家族はその頃はまだ引っ越してきていなくて、学校に編入していないから、ありえないことだわ」と言い、チャスティンは自分が人間違いをしていたことに気づく。
(え?何その話)とまず思った。記憶があるはずの性的被害者が、性的加害者の顔を忘れている時点でビックリする展開で、犯人の汚名を着せてしまうのはどうするのかと心配になった。しかしそれはチャスティンが「勘違いだった」と詫びて終わる。あ、それで終わりなんだという意外な話だった。でもそもそも、その暴行事件の話も唐突に出てきたし、え?!え?!という展開で、何が肝なのかわからない。
性的な事件の被害者すら加害者の顔を忘れてしまうような、記憶とは難しいものだという話なんだろうか。だけど全編を観ていると感動的で、ラストも胸がいっぱいになったし、すごく良い映画だった。