ミシェル・フランコ監督脚本。若年性認知症による記憶障害を抱えるソールと、高校の同窓会で再会するシルヴィア。ソーシャルワーカーの彼女は、彼の家族から面倒を見る仕事を頼まれる。はじめは彼を翻弄するような話をするシルヴィアだが、次第に彼の純粋な人柄に魅かれ、お互いに心を開く。だが、今度は二人の仲を引き裂こうとする動きが。そして彼女の父から受けた性的虐待の記憶。それが断酒会に通うようになった原因のように思える。それはシルヴィアにとって忘れたい記憶なのか。しかしその事実を家族は避ける。だが、なかったことにはならない。記憶を失う男と、記憶を忘れることが出来ない、許すこともできない女。
本作は、回想シーンを用いることなく、会話からうかがい知るだけだ。それも説明的セリフではなく、会話の断片からの情報をパズルのピースを嵌め込むようなミステリアスな構成。そして登場人物は全員孤独でいることが分かってくる。その原因を許す寛容性はヒロインにはない。家族の断絶。そしてラストシーンはハッピーエンドのように思えるが、それで解決したわけではない