出産間近の妻と暮らしているジャスティンは、殺人事件を扱った裁判の陪審員に選ばれる。
女性の遺体が狭い道路の脇下で発見され、その女性の恋人が殺人容疑で捕まっていた。
裁判に参加したジャスティンは、現場の状況を聴きながら、自分の記憶の中のある出来事を思い出し・・・。
御大クリント・イーストウッドの作品が劇場公開されないなんて・・・。
本人は別に最後の作品だと言っているわけではないようですけど、2024年現在で94歳ですから、いつ最後になるか分からないのも事実。
だからこそ劇場公開はしてもらいたかったなぁと思うのでした。
で、本作の印象ですが、イーストウッドの安定した構成力を改めて感じることができるものでした。
早い段階で物語の設定が開示され、あとはニコラス・ホルトが演じるジャスティンの葛藤が描かれるという、ともすれば飽きがきそうな展開ながら、良心の呵責から被告を無罪にしようとしつつ、自分にも疑いの目を向けられないように動くジャスティンの振る舞いと、そしてそれがどのような結果になるのか?と思わせる構成は、シンプルに面白かったですね。
陪審制度、司法制度、事件捜査の問題を示すという面はあれど、そうしたメッセージ性よりも純粋にストーリーが面白く感じました。
最後のトニ・コレットが演じるフェイスの表情、そしてそれを受けたジャスティンの表情。このラストの余韻が良いじゃないですか。
結局のところ事件の真相は曖昧で、色んな可能性を残して終わってしまうわけですけど、根底にあるのは「正義」から目を逸らさないというイーストウッド作品で一貫して描かれてきたテーマで、そういった部分でブレないところが安定感に繋がってきたのだろうと感じた作品でした。