このレビューはネタバレを含みます
完全にネタバレしてます!
先入観なしの方がいいと思うので、
そう思った方は、鑑賞後に読んで下さいね。(パールさんに合わせました)
ネットでイーストウッド監督の最新作が劇場公開されないかも…。みたいなニュースを見て気になっていたんだけど、パールさんのレビューがきっかけで、それがこの作品だと分かった。さらにU-NEXTで見放題になっていて、驚きながらも早速鑑賞。いや〜、イーストウッド監督らしい、見応えのある作品だった。司法、陪審員のあり方に重ねて、人間の本質を問うている作品。その人の人生を左右する裁判の判決に携わる検察が自身の都合で、容疑者を有罪にしようとする恐ろしさ。さらには判決には興味がなく、選ばれたから仕方なく陪審員をやっていて、真剣に事件に向き合ってない面々がいる状況。こんな人間たちに自身の人生を左右する判決をされたら、たまったもんじゃない。事件に向き合わない理由が、容疑者の人生と天秤にかけたら、ちっとも重くない。残念ながら、人間がいかに自己中心的な生き物なのか思いしらされる。そしてキーワードは天秤。ジャスティンは真実と自分の将来を、フェイスは自分の出世と正義を天秤にかける。派手さはないものの、この人間ドラマが見応えがある。ジャスティンの葛藤の中にうごめく様々な感情をイーストウッド監督らしさで見せてくる。自身を許して欲しいためにサイスを救おうとする甘え、真実を告白出来ない弱さ、将来を失いたくない欲望、正義は何か分かっているのに、出来ないズルさ、自身に火の粉がかかるのが分かると真実に蓋をする冷徹さ、これらをジリジリと描いて、それが我々にちゃんと伝わるんだから凄い!さらに凄いのはジャスティンほど描かれていないフェイスだが、彼女の心の変化だけではなく、そこにある彼女の人間性までしっかり描けているのは流石だった。オープニングはジャスティンの天秤、終盤の天秤はフェイスの天秤なんだろうな。そして報われないのは偶然の事故で亡くなった犠牲者。なんせ誰も犠牲者を哀れに思って動いてくれないのだから…。ジャスティンはアルコール依存の過去があったが、今回も逃げてしまったことを考えると、弱い人間なんだろう。ついでにジャスティンの嫁も卑怯。普通は夫を諭すだろうに…。彼女も自分が寂しくなるのがイヤなことしか考えてない。このサラッと行なわれる悪気のない悪意っていうのが始末が悪い。それでもラストはフェイスが正義を貫く決心をしたのだろうから救われる。ジャスティンには過酷な運命が待ってるんだろうけど…。最後に、個人的に、何気に悪人のポイントはキーファー・サザーランドだろうと思う。だからこそ名のある役者に任せたんだろうな。サラッとバッドアドバイスをするのは善人とは言えない。
しかし、年齢のことはあまり言いたくないけど、94歳でこのレベルの作品を撮るとは、イーストウッド、恐るべし。
何故、こんな素晴らしい作品が、劇場公開されないのか不思議でしょうがないね。難しいかもしれないが、今後のイーストウッド監督に期待したい。
今作で、今年の鑑賞本数、300本達成!
なんとか達成出来て、良かった〜!