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ザ・バイクライダーズのギルドのレビュー・感想・評価

ザ・バイクライダーズ(2023年製作の映画)
3.9
【武骨さと温かい居場所が冷えるまでに生まれる家族愛・序列・分断】
■あらすじ
アメリカの写真家ダニー・ライアンが1965~73年にかけてのシカゴのバイクライダーの日常をとらえた同名写真集にインスパイアされた作品で、伝説的モーターサイクルクラブの栄枯盛衰を、「エルヴィス」のオースティン・バトラーと「ヴェノム」シリーズのトム・ハーディの共演で描いた。

1965年、シカゴ。不良とは無縁の日々を送っていたキャシーは、ケンカ早くて無口なバイク乗りベニーと出会って5週間で結婚を決める。ベニーは地元の荒くれ者たちを束ねるジョニーの側近でありながら群れることを嫌い、狂気的な一面を持っていた。
やがてジョニーの一味は「ヴァンダルズ」というモーターサイクルクラブに発展し、各地に支部ができるほど急速に拡大していく。その結果、クラブ内の治安は悪化し、敵対クラブとの抗争も勃発。暴力とバイクに明け暮れるベニーの危うさにキャシーが不安を覚えるなか、ヴァンダルズで最悪の事態が起こる。 「最後の決闘裁判」のジョディ・カマーがストーリーテラーとなるキャシー役を務め、バトラーがベニー、ハーディがジョニーを演じた。監督・脚本は「MUD マッド」「ラビング 愛という名前のふたり」のジェフ・ニコルズ。

■みどころ
モーターサイクルクラブの栄枯盛衰を描いたお話。
インタビュー形式でベニーとの馴れ初めや「ヴァンダルズ」でのメンバーらとのやり取りを語る。

全編通じて見ててカッコよかった。バイクや武骨な男らの佇まいもカッコいいし、バイクに乗ってる男たちの映し方がいちいち決まっている。

この映画では居場所を作る気概の温かさや大義と受け容れる温かさ故にコミュニティで争いが起きる苦難と葛藤を描くのが良い。
荒々しいながらもどこか家族のような結束を家庭とは別のコミュニティの良さを示す一方で、コミュニティが拡大するにつれて主義の行き違いの争いで火種が飛びまくって、正義が通用せずコミュニティに疑問を抱くのは凄くリアルだった。
それを示すバイクと車の使い分けが興味深い。
バイクに乗る側からすると車に乗っている人々を権力を持つ側・社会悪として見て、それへの対抗するコミュニティとして描いている。
バイクと車、更に拳と銃という序列が存在するが使役する序列の変遷を指し示していて、属するコミュニティの理想と実態の乖離具合とか掲げた志の嘘っぽさに直結するのが上手い。
歳を取るにつれて手を動かしたり受け容れる事が億劫になって権力に胡座を掻く"楽さ"を味わうというか…かつてはバイクに乗る行為で抗い車に乗るステレオタイプ・権力に対峙しているつもりが、制御しきれないコミュニティと分断に対して権力を使役したり保守的になる側に立つ象徴として車に乗るというのがリアルで面白い。

バイクで一緒に走るのが居場所だなと。そういった意味で属する趣味のコミュニティについて考えさせられる良い映画でした。
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