ロアー

ドリーム・シナリオのロアーのレビュー・感想・評価

ドリーム・シナリオ(2023年製作の映画)
3.7
まず設定がすごく面白い。
"This Man" のような元となるネタはあったにしろ、よくこんな設定を思いついて、人間の心理や社会的テーマに繋げたなぁ〜と拍手したい。

人々の夢に現れる男を演じるのが、ニコケイというのも見事過ぎるキャスティングだと思った。考えれば考えるほど、ニコケイほどこの役にハマる人はいないんじゃないかと思う。
ニコケイって知名度も実力も申し分ないはずなのに、どうにもいじられがちで、例のニコケイ顔グッズみたいなものを作られて、世界中からちょっと歪んだ愛され方をされてる特殊な俳優だと思うので。
ポール役はそういう世間のおもちゃになる素質のある俳優こそぴったりだったと思うし、確かな演技力も持ち合わせているニコケイだからこそ成り立ってた部分が大きい映画だと思った。

冷静に考えれば、ポールの言い分は最後まで別に間違ってなかったのが気の毒で仕方ない。確かに有名になってちょっと舞い上がったり、多少の恩恵を受けたりしたかもしれないけど、それもそうやってポールを持て囃したり、利用しようとした人たちがいたからこそのことで。

人って何らかの不当な目に遭わされると、自分は被害者だと騒ぎ立てて、感情だけで誰かを責めがちな生き物だと思う。
集団になることで余計に自己正当化が進むし、正義厨のような関係ない人まで湧いてくる。
そういう輩から攻撃しても許される対象と見做されたら最後、ポールのような目に遭ってしまう。
ニコケイならいじって良いみたいな風潮も然りで、だからこそ、この役はニコケイにぴったりだと思った。

こういうキャンセルカルチャーやネットリンチの構図ってそこら中にわんさか溢れていて、うっかり覗くと気持ち悪くなるのであまり見ないようにしたい。叩いてる人たちは、本気で自分は悪くない、むしろ良いことをしてる、相手が悪いんだから何をしたって許されると思い込んでるのが本当に苦手で...そう言う意味で気持ち悪くなる映画だったし、やるせなくなってきて疲れる映画だった。

ただ、そういうネットの構造を夢の形に落とし込んだのは本当にお見事としか言いようがない。
最後のやつは、こういったキャンセルカルチャーを利用する存在があるということ、あるいは最初からそう言った存在が仕組んでいた可能性すらあるんだよ、という一種の警鐘だったのかな?
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