晴れない空の降らない雨

エイリアン3の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

エイリアン3(1992年製作の映画)
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 フィンチャーの映画監督デビュー作でもある本作ははっきり言って失敗作だと思うが、彼の作家性を楽しめる向きには一見の価値がある。本作の脚本の特徴は、「お約束をことごとく裏切る展開」にある。性格が悪いとしか言いようのない冒頭の展開からして、言えることだろう。その後もさも重要そうに出てきた人物がことごとく抹殺されていく。しかし、こうして失うもののなくなった本作のリプリーは、いささか皮肉な形で1作目の自分を取り戻しているようだ。

 そのリプリーだが、本作ではどう見てもジャンヌダルクである(坊主だし)。監獄の囚人たちが禁欲を教義のひとつとする宗教団体を形成していることからも、フィンチャーが彼独特の仕方で宗教的共同体を描こうとしていることは間違いない。

 他方、おそらく偶然だが4作目のリプリーを彷彿させる要素もある。リプリーがエイリアンに寄生され、彼らの捕食対象から外されることだ。ある意味で、リプリーがエイリアンと一体化したと言えなくもない。また、本作ではついに究極の敵がエイリアンでなく企業であることが示されており、この点に関しては自覚的に4作目に引き継がれたように思う。