【彷徨える魂へ…】
死生観は個人によって異なるものだと思う。
それに、宗教的なものや、民族的なものに宗教的な考えが加わったもの、或いは哲学的なものまで、そもそも様々あるはずだ。
個人的には、輪廻は仏教に特徴的なものだと思っていたのだけれども、もともとは同じインド発祥のバラモン教の考え方だったらしい。
確かに、ブッダは死んだ後、人がどうなるかは分からないと言っていたとのことなので、どこかで仏教と融合した考え方なんだろうなと思った。
この「わたくしどもは。」は僕たちの死生観の一部を交えて象徴的に物語として表現した作品のように思える。
映画のフライヤーに、佐渡島の「無宿人の墓」にインスピレーションを受けて作られた云々と書いてあった。
少し調べてみると、「無宿人の墓」とは、江戸時代に飢饉などで家や仕事を失い行き場のなくなった主に江戸幕府の直轄領の人が、当時の戸籍である人別帳や宗門帳から抹消され、佐渡島に送られ、金鉱山で過酷な労働に携わり酷使され、亡くなると身寄りだけでなく戸籍も何もない人間として葬られたお墓ということだった。
僕たちはいったいどこから来たのだろうか。
いったいこれからどこへ向かうのだろうか。
誰もが抱く疑問のような気がするけれども、無宿人はより強く感じたに違いない。
そして、生前のミドリとアオが話す「生まれ変わったらまたいっしょに」という言葉には、実は重い意味があるようにも思える。
戸籍などなくとも、愛する人がいれば、それは多くの心の隙間を埋めることが出来るのではないか。
僕がよく思い出す「イントゥ・ザ ・ワイルド」のクリスの書き残した言葉「幸福とは分かち合って初めて感じるもの」もそういうことじゃないのか。
そんなことを感じた作品だった。