このレビューはネタバレを含みます
面白かった。
ゴンドラの乗務員として働く二人の女性、イヴァとニノ。イヴァは新人で、ニノはそこそこ長くこの仕事をしていて日々にうんざり気味。下りと上り、それぞれに乗り込んだ二人は毎日空中で一瞬の交錯を楽しんでいる。
そんな幸せな、ささやかな時間の連続。
前知識なしだったので、こんな素敵なラブコメ/ロマコメとは思わずニッコリ。
機械が駆動し、ロープが動き、ゴンドラが動き、美しい山の風景の中を進んでいく。この一つ一つの音の作りが素晴らしく、セリフの無い画面の中で綺麗な時間が構築されている。
その中で進む、お互いを喜ばせるためにゴンドラをいじっていく二人きりの世界がロマンチックだ。山の上には従業員ガチ恋迷惑上司、下界は下界でやっぱり日常にはヤなことあるし、だからその中間地点である空は特別な場所だ。そこでのゴンドラ大喜利合戦がまず最高。
女性恋愛ものでよくあるウブと百戦錬磨みたいな組合せではあるのだが、二人はしっかり対等であるエピソードの積み上げもかなり良い。
互いのためにネタを用意する二人が、いつしか互い以外の人々にもわけあたえられる存在になる。そしてそうなった二人はもう無敵で、だから最後には二人は幸福な空中から飛び出して外へと旅立っていく。85分セリフ無しだからこそ描ける、美しい映画。現実にある風景だけれど映画の中にしか存在しえない幸せな成長と門出の瞬間。
セリフがない、しかもキャラクターが唸ったりしてセリフを話さない世界であることが明確である、そんな世界観だからこそ、こういうリアルとはちょっと違う世界が成立するんだろうな。
いい映画だった。
セリフ無しだけどたぶん『車椅子の男』は昔ゴンドラの技師で、怪我してあの人に職を取って代わられたんだろうな。