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オールド・フォックス 11歳の選択のmasatoのレビュー・感想・評価

3.8
久しぶりに台湾映画が見たくなってサンサン劇場へ。

オールドフォックス(腹黒いキツネ)と呼ばれるフィクサー的な初老の男と、自分の店を持つために真面目に働く父親。11歳の少年はその間で揺れ動く。

人の気持ちを思いやる人間は負け組だと言うキツネ。彼は少年に「同情しないために3つのことをしろ」と諭す。

氷水を飲め
目を閉じろ
「知ったこっちゃない」と言え

そうすれば、同情を断ち切れる。強く生きることができて、金が手に入ると教える。

それは、父親とは正反対の生き方であり、まさに目の前の父親がだんだん負け組に見えてくる。

この辺りの演出が絶妙でうまい。時代は1989年。台湾でもバブルが弾けて、人々が札束に頬を張られるように右往左往している。その時代の空気がしっかりと映り込んでいるので見ていて緊張感もある。謎めいた裕福な婦人役で出演している門脇麦もいい。

ただ、映画としてはやっぱり古臭い感じがしてしまう。僕はゴットファーザーが好きだけれど、今の時代に若手監督があのままのゴットファーザーを作ったとしたら、それはやっぱり違うなあ、と思う。

時代背景が1989年でもいい。でも、今の監督が今の観客に向けて投げかける新しさがやっぱり欲しい。
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