世田谷のとある小学校のコロナ下の1年間を記録した、ノーナレーションのドキュメンタリー映画。英題は "The Making of a Japanese"。つまりそういうこと。
まず、撮影に協力された小学校と教師と生徒と親御さんたちに感謝したい。
撮影は2021年度の一年間。2021年といえば東京オリンピックの年。開催を前にして緊急事態宣言が発出されたあの年。ただでさえ難しい被写体なのに、この状況下でよく頓挫せずに実現できたと思う。
驚くほど変わらぬものの数々
・ランドセル
・ホウキにチリトリ
・避難訓練に防空頭巾
・給食
・放送委員
・何より「先生」のメンタリティー
変わったものは数えるほどしかない
・タブレット
・マスク
・黙食
・アクリル板
・ルンバ!
ある先生は言う。「自由と制限のバランスの上を綱渡りする毎日。」まさにこれに尽きるのだろう。特に終盤は、繊細さと緊張感のあるシーンの連続。批判があることは教師が一番わかっていると思う。
「またね」はないものと知りながら、黙って「またね」と送り出す先生。予めわかっている一年間なのに、なぜこうも心を動かされるのか。
終映後に 山崎エマ 監督のトーク・セッションあり。
日本の小学校で過ごすが、以後主に海外で生活。
日本人が共有する「当たり前」な社会習慣の源泉としての「小学校」を撮りたかった。
「いじめ」「不登校」「教師の負担増」といった負の側面もあるが、それは他の作品に委ねたい。
協力してくれる学校を探すのに6年かかった。「東京オリンピック」が千載一遇のチャンスになってくれた。
150日間一緒に過ごし、700時間記録した。
個人が入り口の欧米と、集団が入り口の日本の違い。
もう一つの違いは、先生と生徒との距離感。先生が生徒の身体に触れるなんてあり得ないという国もある。
「ありのままを認める」ことと、「もっとできるよ」と励ますことのバランスの難しさ。
全てはバランスと対話なのだ、と改めて思う。
この冬、似た被写体を追ったドキュメンタリー『大きな家』と併せての観賞をおすすめしたい。