1980年に結成しカルトな人気を集めたロックバンド“THE FOOLS”の足跡を辿るドキュメンタリー。監督は音楽ライターをメインに活動する高橋慎一。※完全版にはボーカル伊藤耕の獄中死の真相を伝える記者会見映像を追加。
主要メンバーであるギターの川田良は血栓による持病悪化で2014年に死去(享年58)、ボーカルの伊藤耕は覚醒剤取締法違反で逮捕・服役を繰り返し2017年に北海道月形刑務所で病死した(享年62)。その最後の5年間のステージとインタビューを映し出す。。。
THE FOOLSの名前は聞いたことはあったが曲は聴いたことがなかった。コマーシャリズムを嫌いライブ中心に活動していたとのこと。今回初めて映画を通して聴いたのだが自分の好みとはちょっと違う路線だった。しかしドキュメンタリーとしては非常に興味深い一本だった。サブカルチャーの一翼を担う音楽業界。その表舞台から離れた場所でロッカーとして生き続ける人々の生と死を垣間見た。
伊藤耕はメジャーコードで“自由”を歌い、一方でクスリに支配されていた。本作ではなぜ覚せい剤にハマったのかは追求していない。そもそも昔の欧米ロッカーはシャブ中だらけだったし聴くだけ野暮なのかもしれない。彼の姿勢に眉をひそめてしまう自分は、いつの間にかホワイト社会になじみ切っているのだと気付かされる。
ギター川田良の風貌が若い頃と豹変し瘦せ細っていくのが凄絶だった。終盤では椅子に腰かけながらの演奏になるがギターの音は迫力を増しているように感じた。早逝したサックスプレイヤー阿部薫のラストライブを連想した。
二人の他にも還暦前後のクセの強いロッカーたちが登場する。久しくロックは聴いていなかったが、本作を観てロックの持つ刹那的な在り方への憧れがまざまざと甦ってきた。まさしくロックな映画と言える。