JunichiOoya

カオルの葬式のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

カオルの葬式(2023年製作の映画)
4.0
葬式の話。

というとやはり伊丹十三さんの映画を思い出す。あの映画で「旨いんですよ」と山崎努さんが推すのが伏見の日出盛。その頃は菊正宗と剣菱以外の日本酒なんて知らないし。でも日出盛を初めて飲んだのは学生時代だし、そうすると84年の『お葬式』より前だなあ。『女たちよ!』辺りかなあ。
まあ良いです。私の中では『お葬式』=日出盛なのです。

『カオルの葬式』にも日本酒がたくさん出てくる。エンドロールにも岡山の地酒蔵がいっぱい。贔屓の辻本店の名前もクレジットされてました。

もちろんビールも登場するのだけれど、やっぱり葬式には日本酒、それも一升瓶かしら。

スペイン、シンガポールとの合作ということでスタッフの出自はさまざま。彼らには岡山の田舎の葬式はどんなふうに映ったのかしら。現場での作り手間のわっさもっさは伝わってくるのだけれど、まとまった映画にはなんとも言えない「日本映画」感が溢れていて。

カオル役の一木香乃さんはとりわけ死んでる時の演技が素敵でした。むしろ回想シーンより死人のカオルに惹かれた。
元役者のデリヘルドライバー役関幸治さんは終盤の市役所シーンがちょっと…
自称カオルの親友役黒沢あすかさん、全くもって坊さんに見えない住職役の原田大二郎さん、皆さん素敵。

でもやっぱり、葬儀屋社長の足立智充さんのリアリティが頭抜けていました。彼の所作があって、この映画は「葬式の映画」として完結できたんだ、と。

終盤、ドタバタの大乱闘のあと、「父」と「娘」が演じる「泥試合」もまことにリアリティがありまして。
そう、これは泥試合映画なんですよ。

低予算、短時間の撮影(だと思うのですが)、大人数の登場人物、そして多国籍軍スタッフ、そういったものをひとまとめにまとめ切って一本に仕上げる湯浅典子さんの力技に感服しました。

おもしろかった、満腹です。
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