【今はその時ではござらん】
「カメラ止めるなよ!」
「止めませんよ!」
明らかに「カメ止め」に対するオマージュとして用意されたセリフだよね😁
今、“カメ止め再び!”みたいに言われているけれども、僕はこっちの方が実は好き。
ストーリーや人物描写、運命の切なさ、運命を受け入れて未来を希求する姿など丁寧に描かれていると思うからだ。
よく考えたら幕末なんて究極のガチャ・ワールドだ。
更に、そこから現代にタイムスリップしたなんて言ったら、ガチャにガチャの上塗りのような感じもする。
しかし、一芸に秀でるとは役に立つものだ。
この「侍タイムスリッパー」の面白いところは、物語の設定云々は当然として、現代に舞い降りた新左衛門も風見も自らの正体を他の誰にも明かさないで生き抜こうとしているところだ。
事あるごとにガチャだ!ガチャだ!と自分の境遇を人に告げ、大袈裟に嘆いてみせている連中とは大違いなのだ。
ラストどうなるかと見守っていたが、斬りあいも含めて、これも秀逸だ。
今の境遇を嘆いたりしないのはもちろん、今に生きることを考え、そして、わだかまりを捨て去る。
最後の一太刀は、自分自身の気持ちにあびせたものに違いないのだ。
何のために生きていたのか。
時代も変われば、価値観だって変わる。
それに翻弄される事だってある。
しかし、変わらない価値観もあるはずだ。
そんな問いかけもこの作品の中にはある。
そして、「今はその時ではござらん」とは、これからも生き続けるという決意でもあるんじゃないのか。
笑ってホロリと泣けるナイスな作品だった。